◆世界観概要
ストラトスフォーの世界
 太陽系のはるか外周―――半径約2光年の宙域にオールト雲と呼ばれる彗星の巣がある。そこに漂う無数の岩石と氷の魂が時折、太陽の重力に引かれて落ちてくる事がある。その氷魂が太陽熱で蒸発を始め、水蒸気が太陽風になびいて尾を引くと、それがほうき星―――彗星になるのである。
 彗星は太陽系を通過する時、氷に混じっていた無数のチリや岩石をばらまいて飛び去る。そのチリの密集した空間を地球が通過すると、地球の引力に引かれて落ちてきたチリが大気との摩擦で燃え、夜空に流星群が発生するのである。
 彗星。そして流星。それら夜空に輝く一大ページェントが地球に未曾有の危機を及ぼすとは、誰も想像だにしなかった。

天体危機管理機構
 時は西暦2XXX年。
 ここ近年、太陽系に飛来する彗星の数が急激に増えていた。その多くはいつも同じ方角から現れていた。アメリカ航空宇宙局・NASAは彗星の発生源の方角に無人観測機を飛ばし、彗星の巣の調査を行った。そのはるか外宇宙に足をのばした観測器から送られてきたデータにはなんと予想だにしない事実が記されていた。
 その宙域にあったのは、無数の遊星群であった。その遊星群は次第に太陽に近づきつつあり、恐ろしい事に次々と太陽系内惑星系に突入すると言うのである。そして、その幾つかは地球に直撃する可能性があると言う。
 小惑星や巨大彗星など、巨大な天体との衝突による地球の被害は計り知れない。直撃を受けた地域はもちろん、衝突による大爆発で成層圏に舞い上がったチリが太陽を遮ると、地上は太陽輻射を受けられなくなり氷河期になる。太古の昔、恐竜が滅びた原因に巨大隕石の衝突による氷河期説が唱えられているのはご存知かと思う。衝突の規模が更に大きくなり太陽光の遮断が長期に渡ると植物は全滅し、間をおかず動物も死滅するのだ。もちろん人間も例外ではない。
 この未曾有の危機を回避するため、人類は持てる全ての技術を結集し、地球に衝突する可能性の高い天体を迎撃する機関を設立した。それが天体危機管理機構である

彗星迎撃部隊(コメットブラスター)
 衛星軌道上のオービタル・ステーションから軌道迎撃機で発進、地球衝突コースを飛来する彗星を迎撃するという、人類生存の鍵を握る重要なミッションを担う。
 彼ら(彼女ら)はコメットブラスターと呼ばれ、世界中から選りすぐられた沈着冷静で状況判断能力に秀でたパイロット達で構成されている。地球の命運を握る責任重大で過酷な仕事であるためか、それともエリート意識から来るものかはわからないのだが総じて彼らは無表情で口数も少ない。
 コメットブラスターは地球ではヒーローのように扱われ、人々の間ではアイドルさながらの人気を博している。

下地島超高々度迎撃基地
 極東は日本の沖縄県に位置する、のどかな南国の小さな島、下地島。その青い海、白い砂浜、大自然の緑に囲まれた中に、下地島超高々度迎撃基地がある。もともとは民間航空機の訓練飛行場だった下地島飛行場をベースに、メテオスイーパー基地兼、コメットブラスター訓練基地として稼働している。
 しかし、殆どの隕石は軌道上の部隊が処理してしまうので、滅多な事では出撃はない。

超高々度迎撃部隊(メテオスイーパー)
 コメットブラスターが撃ち漏らした彗星、または、迎撃したものの安全とされている基準値まで小さく砕け切らなかった彗星破片による隕石を、世界各地の地上基地より迎撃機で発進し破壊する。それが超高々度迎撃部隊メテオスイーパーである。しかし、殆どの彗星はコメットブラスターによって処理されるため、実際の出撃は滅多にない。
 しかし、いざ出動という時は、コメットプラスターが撃ちもらした後なので、手遅れ寸前の時間ギリギリテンパった状態で、正確な迎撃コースもぎりぎりになるまで割り出せないため時間的余裕もなく、かなり緊迫した状態でスクランブルがかかる。また、成層圏外縁部までミサイルを抱えて上昇するには多くの燃料を消費するため、搭載燃料を節約するためには上空で待機するわけにもいかない。
 よって、いかに高い所までいかに早く到達するかが勝負のカギで、超高々度迎撃機にRATO(Rocket Assisted Take Off)ポッドを取り付け、ZELL(Zero Length Launch=零距離発進)で一気に加速、上昇をかける。そしてミサイル発射と同時に急速反転、今度は爆発に巻き込まれないよう一気に急降下、待避する。
 言ってしまえば、尻拭いでありながら一番危険な任務で、しかも失敗したらあとがないという、実に割に合わない部署である。

彗星被害
 地上にはすでにいくつもの彗星破片による隕石が落下しており、あちこちに小クレーターが空いている。
 コメットブラスターを始めとする天体危機管理機構の数々の対策によっても全ての落下天体を100%食い止める事は不可能である。地上に甚大な被害を与えるのであろう巨大な隕石を破壊するのが手いっぱいで、微小隕石や作戦で破壊された残りの小破片は数限りなく地上に落下していて、クレーターとまでは言わなくても、家屋の損壊や地面の穿孔は日常茶飯事である。交通事故の頻度で、大小の地震レベルの隕石被害が起きているのだ。
 内惑星系に落ちてくる巨大彗星にはそれぞれ名前がつけられている。昔は彗星には発見者の名前がつけられていたが、今は危険な彗星は事前に察知しなければいけないので、殆どは観測機関によって発見、その後は破壊され、また、あまりにも数が多いため、発見者の名が付く通例は意味をなさなくなっていた。代わりに作戦上のコードネームとして、地球衝突確コースに乗った彗星に毎年一番目から順にアルファベットのAから始まる女性名がつけられている。